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歌舞伎の家に女の子が生まれたらどうなるのか?何歳まで舞台に立てるか調べてみた

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歌舞伎役者さんのお宅に女の子が生まれた、というニュースを見かけて手が止まりました。この子はこれから、どうなるんやろうと思ったからです。 先に答えを書きます。子どものうちなら、女の子でも歌舞伎の舞台に立てます。ただし大人になると、歌舞伎俳優として続ける道のほうは用意されていません。代わりに日本舞踊の名前を代々受け継いだり、女優として別の舞台に立ったりと、進む先が分かれます。 私は歌舞伎に詳しくないので、松竹と国立劇場(日本芸術文化振興会)の公式資料だけを見て並べました。
この記事で分かること
・女の子が歌舞伎の舞台に立てるのは何歳までなのか
・年齢の決まりが公表されているのかどうか
・大人になったあとに、どんな道があるのか
・歌舞伎の家に生まれた女性が、いま実際にどうしているのか
前提をひとつだけ。今の歌舞伎は、男性だけで演じられています。女の人の役も男性が勤めていて、これを女方(おんながた)と呼びます。
きっかけのニュースは波野家に70数年ぶりの女の子が生まれた話にまとめてあります。ここからは、その先の話を書いていきます。
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女の子が舞台に立てるのは何歳まで?年齢の決まりは公表されていない

「女の子は何歳まで出られる」と決めた文書は、松竹からも日本俳優協会からも公表されていません。なので実際に出た人の年齢を並べて読むしかないというのが正直なところです。 分かりやすいのが市川ぼたんさん(本名・堀越麗禾さん)。所属事務所の公式プロフィールでは生まれが2011年7月25日、父は十三代目市川團十郎白猿さんです。成田屋(團十郎さんの家)の公式サイトには2014年3月に『芝居前三升麗賑』で初御目見得(はつおめみえ)とあります。2歳です。初御目見得とは、子どもが初めて舞台に姿を見せること。名前をもらって出る「初舞台」とは別のものです。 そこから先が驚きでした。松竹の配役表を見ると、2022年12月の歌舞伎座「十二月大歌舞伎」で『團十郎娘』の近江のお兼を勤めています。襲名披露の興行で、11歳のとき。さらに2026年1月の新橋演舞場「初春大歌舞伎」でも『春興鏡獅子』の胡蝶の精として名前が載っていました。14歳です。
いつ年齢出た演目
市川ぼたん(堀越麗禾)2014年3月2歳『芝居前三升麗賑』で初御目見得
市川ぼたん2022年12月11歳歌舞伎座『團十郎娘』近江のお兼
市川ぼたん2026年1月14歳新橋演舞場『春興鏡獅子』胡蝶の精
波乃久里子1950年4歳ごろ十七代目中村勘三郎襲名披露の初春大歌舞伎で初舞台
波乃久里子1961年15〜16歳劇団新派『婦系図』妙子役で初参加
下2行は波乃久里子さん。劇団新派(松竹)の公式プロフィールに、父は十七代目中村勘三郎さん、昭和25年の襲名披露・初春大歌舞伎で初舞台とあります。1945年生まれなので4歳のころ。そして昭和36年に劇団新派へ『婦系図』の妙子役で初参加し、翌年に入団されています。 公式の数字で追えるかぎりでは、2歳から14歳までは確かに舞台に出ている。そのあとはその子ごとに違う、というのが今のところ言えることの全部でした。
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大人になると道が分かれるのは、研修の募集要項にも出ている

では大人になると何が変わるのか。ここは国の劇場が出している募集要項がいちばん確かでした。国立劇場養成所(日本芸術文化振興会)には歌舞伎俳優を育てる2年間の研修があり、その応募資格がこうです。
中学校卒業(卒業見込みを含む)以上の男子で、原則として年齢23歳以下の方。経験は問いません。
(国立劇場養成所「歌舞伎俳優研修」募集要項より)
歌舞伎の家に生まれた子は研修を通らず親や一門へ入門するのが普通なので、そのまま家の子に当てはまるわけではありません。ただ、公の入口がこう書かれているのは、道の分かれ方を知る材料になりました。他の分野も見てみたら、こうです。
研修の分野応募資格期間
歌舞伎俳優中学校卒業以上の男子・原則23歳以下2年
歌舞伎音楽(長唄)中学校卒業以上の男子・原則23歳以下3年
文楽中学校卒業以上の男子・原則23歳以下2年
長唄は歌舞伎の舞台で流れる音楽のことです。舞台の上だけでなく、音楽のほうも同じ書き方でした。修了後については「伝統歌舞伎保存会の斡旋により、幹部俳優に入門して歌舞伎俳優として舞台出演することになります」とあり、入門先まで含めて仕組みになっています。
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團十郎家では、娘が「ぼたん」「翠扇」という名前を代々受け継いでいる

成田屋の公式サイトで、いちばん「そういうことか」と声が出たのがここでした。團十郎さんの家には、娘さんが継ぐための名前がちゃんとあるんです。公式のプロフィール欄に3代ぶんが並んでいました。
本名生まれ受け継いだ名前
堀越治代1949年十一代目市川團十郎1981年に二代目市川紅梅、2019年に初代市川壽紅
堀越智英子1979年十二代目市川團十郎2006年に三代目市川ぼたん、2019年に四代目市川翠扇
堀越麗禾2011年十三代目市川團十郎白猿2019年に四代目市川ぼたん
「ぼたん」を名乗ったあとに「翠扇」へ移る流れです。日本舞踊の市川流の名前で、堀越治代さんは市川流の総代になり作品の振付も担当、堀越智英子さんは2021年に第71回芸術選奨の文部科学大臣新人賞を受けたと公式にあります。
「襲名(しゅうめい)」は、その家に代々伝わる名前を受け継ぐこと。役者名だけでなく、日本舞踊の流派の名前でも同じように受け継がれていきます。
家系図は跡取りを書くために作られるので、女の子の欄はどうしても薄くなります。でも名前のほうを追いかけると、娘には娘の系譜が続いているんですね。

歌舞伎の外に出て、名前を残した人たち

大人になったあと実際にどうしているのか。公になっている方だけを並べます。 まず波乃久里子さん。劇団新派の公式サイトによると、初代水谷八重子さんに憧れて新派に入り、そのまま新派を支える女優になられました。 松たか子さんもここに入ります。オリコンのプロフィールに「歌舞伎俳優の9代目・松本幸四郎の子として生まれ、10代で舞台デビュー」とあります。この九代目幸四郎さんが、のちの二代目松本白鸚さんです。所属レコード会社の公式プロフィールには「1993年歌舞伎座『人情噺文七元結』で初舞台」とあり、1977年6月生まれなので16歳のときになります。 そして寺島しのぶさん。オリコンのプロフィールでは、父が尾上菊五郎さん、母が富司純子さん、弟が尾上菊之助さん。この方は大人になってから歌舞伎座の舞台に立っています。2023年10月の「錦秋十月大歌舞伎」で、山田洋次さん脚本・演出の『文七元結物語』の長兵衛女房お兼を勤めているのが松竹の配役表に載っていました。 同じ演目の娘お久は男性の子役、角海老の女将お駒は女方の俳優さんです。そのなかに女優さんが1人入っている形になっていて、並べてみて初めて「こういう出方があるのか」と分かりました。
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ここから個人的な話をさせてください

うちは上2人が男の子で、末っ子が女の子です。3歳になったばかりで、上の兄たちがやることを全部まねしたがる時期なんですけど、まねできるものとできないものがあるんですよね。長男が習っていることを「やる」と言い出しても、年齢が足りなくて入れなかったりする。その説明を3歳にするのが、まあ難しい。うちの場合はあと何年か待てば同じ場所に立てるので、まだ言いようがあります。 今回調べたのは、その「待てば同じ場所に立てる」が、ある年齢から先はそうならない、という話でした。しかも本人が下手だからでも、努力が足りないからでもない。資料のどこにも、そういうことは一言も書いていません。 正直に言うと、調べ始めたときは「女の子は舞台に出られない」で終わる話だと思っていました。でも配役表を1枚ずつ開いていったら、2歳の子が出ていて、11歳で大きな役を勤めていて、14歳でまだ名前が載っている。終わりの線がどこにあるのか、公式のどこにも書いていない。それが分かっただけでも、調べた甲斐がありました。 そして名前の話です。ぼたん、翠扇、紅梅、壽紅。娘のために用意された名前が、80年近く受け継がれている。家系図の上では線が細く見えても、別のところにちゃんと道がつくられていた。ここを見つけたときは、ちょっと手が止まりました。 生まれた子がその道を選ぶかどうかは本人にしか決められないので、ここから先は書きません。ただ、選べる道が何本かあると分かっているのと、いないのとでは、家の人の気持ちもだいぶ違うんじゃないかなと思いました。

まとめ

公式の資料で分かったことをまとめます。
  • 子どものうちは女の子も舞台に立てる。市川ぼたんさんは2歳で初御目見得、11歳で『團十郎娘』、14歳で『春興鏡獅子』
  • 「何歳まで」と決めた文書は、松竹からも日本俳優協会からも公表されていない
  • 国立劇場養成所の歌舞伎俳優研修の応募資格は「中学校卒業以上の男子で、原則23歳以下」
  • 團十郎さんの家では、娘が「ぼたん」から「翠扇」へと日本舞踊の名前を受け継いでいる
  • 波乃久里子さんは新派の女優、松たか子さんは16歳で歌舞伎座初舞台、寺島しのぶさんは2023年に歌舞伎座へ出演
生まれたばかりのお子さんについては、名前も今後のことも何ひとつ公表されていません。新しく分かったことがあれば追記していきますね。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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